【中級者脱却】中国語難発音② 尻切れトンボの二重母音
中国語の発音上級者になるためシリーズ、第2回
こんにちは、チャイ語とミャンマー語をマスターしたいチューメンです。
さて、先日の ü 母音に続いて、中級者によくありがちな発音のワナと改善方法を書いていきたいと思います。二回目のお題は、「尻切れトンボの二重母音」です。
うーん、謎ですね。そんな言い方どこの教科書にも書いてないと思います。
そうなんです。なぜならこれは、中国語ネイティブスピーカーは絶対に悩まない問題で、日本人特有の、特に「自分はもう初級者を抜け出たし、発音もできている」と思っている人がはまりがちなワナだからです。
かくいう私も今でもこれは意識付けを続けています。
というのも、音読や通訳のように落ち着いてスピーキングができる状況ではないときに、今でも出てしまうからです。例えばテンションがあがったときの友人との会話、例えばタクシーの運転手とケンカするときの会話などなど、ヒートアップすると僕も今でも残念ながらワナにハマってしまいます…。
自分の反省のためにもしっかりまとめておきます。
- 中国語の発音上級者になるためシリーズ、第2回
- 尻切れトンボの二重母音とは
- 二重母音とは
- 日本語・中国語・英語の違い
- 尻切れトンボ現象=二重母音の後半部消失現象とは?
- 尻切れトンボが発生しやすい人
- どうすればいいの?ここがポイント
- 【さらに上級者へ】清潔な二重母音と速度の共存
- 見本としてスピーチコンテストの例を
尻切れトンボの二重母音とは
さて、「尻切れトンボの二重母音」とは一体何でしょうか?
これをもう少し堅い言葉で言うと、「二重母音の後半部消失現象」と言えると思います。つまり、ai や uo や ian や iong などの二重母音(厳密には uai とかもあるから複数母音かな?)を発話するときに、2つ目の母音や語尾を丁寧に処理しなかった結果、単語の発音が明確でなくなる現象です。これが「尻切れトンボ」状態です。
二重母音とは
さて、改めてここで二重母音とは何かをいつものようにwikipediaさんに聞きましょう。
二重母音とは、調音の開始時と終了時で音質を異にする母音のことを言う。調音している間に調音器官の位置が変化することによって生じる。
始まりの音質と終わりの音質を比べれば確かに違うが、調音器官が滑らかに移動することによって、聴覚的に1つの母音として認識される。
二重母音は、始まりの音質の方が聞こえ度の高いものを下降二重母音と言い、終わりの音色の方が聞こえ度の高い上昇二重母音と区別される。
ものすごく強調されているのは、2つに分かれた母音の並列ではなく、「母音が連続的に変化する」という点ですね。
日本語・中国語・英語の違い
例えば、代表的な二重母音である ai を使って3つの言語の違いを見てみましょう。
日本語
日本語は「アイス」という単語があります。
しかし、詳しい方もいると思いますが、日本語は、厳密には二重母音ではなく、母音が連続して連なる連母音であり、「ア・イ・ス」のように1つ1つの母音がややクッキリと分かれます。結果、「ア」と「イ」の2つの母音は同等の存在として認識されます。
※日常会話では連続することもあるので、丁寧に発話するときの話です。
英語
次は英語です。英語には ice [άɪs] という単語があります。
この単語を無理やりカタカナで表すとすると、「アーィス」となります。このときの「ア」と「イ」は同等の存在ではなく、1つ目の「ア」が強くなり、2つ目の「ィ」は弱く曖昧に扱われます。これを下降二重母音と言います。
中国語
そして中国語です。「爱」という単語は ài というピンインで表しますが、これは二重母音なので、日本語のように分かれた「ア」「イ」ではなくなめらかに「アイ」と扱われます。
しかし、英語と違うのは、英語は1つ目が相対的に強くなる下降二重母音なのに対して、中国語は2つ目が相対的に強くなる、もしくは同等扱いとなる上昇二重母音ということです。
まとめ
これをまとめると下記のような表になります。
つまり、中国語の母音とは、日本語のようにくっきりはさせすぎず、あくまでも、なめらか二重母音である。しかし、2つ目以降の母音を英語のように弱めたり、曖昧にしたりはせず、複数の母音の「存在感」を同じレベルでそろえることが重要、ということになります。
2)複数の母音の「存在感」を同じレベルでそろえる。
日本語と似ているところもあり、英語と似ているところもありますが、逆に言うと、母音処理において3つの言語は全く同じで良いとは言えない、ということですね。
尻切れトンボ現象=二重母音の後半部消失現象とは?
さて、ここで二重母音から一度離れて、「尻切れトンボ」の話題に戻ります。この現象、具体的にどういうものでしょうか?
上述のように、尻切れトンボ状態とはつまり、「二重母音の後半部消失現象」のことです。詳細例をあげたあとまとめてみます。
二重母音の後半部消失現象とは?
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パターン
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尻切れトンボが発生しやすい人
中国語初級学習者には出づらい
ちなみにですが、この現象は初級者には起こりにくいです。なぜなら初級者はゆっくり丁寧に発話する傾向があるので、iang とか bian とかしっかり最後まで言おうとします。
また、上にも書きましたが、1つ1つしっかり読もうとする意識が強く働くレッスンの音読や通訳などの際も起こりづらいです。
中級レベル以上の男性に多い気がする(すみません、偏見です笑)
要するに、尻切れトンボ現象とは、ちゃんと最後まで言わないといけない iang とか bian と言った母音を、「俺中国語できるぜー、スピードもはえーぜー」と調子乗ったやつが、調子乗りすぎて母音処理が雑になること、と言えるでしょう。なので、男性の中国語発音がこうなりがちです笑
女性や中国語初級学習者にも出るときがある
しかし、これは女性や中国語初級学習者にも出るときがあります。それは焦ってしまうときです。焦ってしまった結果、母音処理まで頭が回らず、結果的に雑になってしまうケースはよく見ます。
では、この改善のために何ができるでしょうか?
どうすればいいの?ここがポイント
この改善は一朝一夕にはいきません。
特に、焦ったときにやや舌足らずになるのは、それは母語である日本語でも同じだと思います。ですので、実はこの点は、「これが俺・私の喋り方なんだ!」と開き直るのも最終的に必要な観点かと思います。
発音の向上はとても良いことだと思いますが、それを考えすぎて、話すことがおっくうになってしまうのは、完全に本末転倒ですので。
その前提の上で、せっかくならということで改善方法を提示していきたいと思います。
録音:自分の現状把握
まずは、何よりも、自分の発音を改めて録音し、現状把握をしてみましょう。
よく何をするにも、いきなり行動する人がいます。
もし、考えて考えて、これ以上考えても仕方ないから行動する!というのであれば、ポジティブな「思考停止」ですが、とりあえずやってみよう!というのは、効率を大幅に下げる場合があり、注意が必要です。
ダルビッシュ先生の言葉を貼っておきます。
練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ。
— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) 2010年6月11日
録音をして、ネイティブの中国人スピーカーのCDなどと比較し、「1つ1つの発音や声調は合ってる。抑揚も合ってる。でも、何か違うような気がする…」という違和感があれば、それは大切にしましょう。そこに気づき、一歩立ち止まれることがまずは素晴らしいです。
もしも発音や声調が明らかに違う場合は、まずはその練習をしましょう。
けれど、そこをクリアした上で、何か違和感がある、特に「跳ねた感じで、中国語特有のねばっこさが少なくて、レガートでない感じがする」と思ったら、おそらくこの尻切れトンボ現象です。
2)単語と単語のねばっこさが少ない。
3)レガート(なめらか)でない感じがする。
分析:連母音or二重母音?上昇二重母音or下降二重母音?
レガートは音楽用語です。
レガート(伊:legato)は、音楽のアーティキュレーションのひとつ。連続する2つの音を途切れさせずに滑らかに続けて演奏すること
レガートな音楽というと、言葉が入っても息は続いているので、「ターッ、ターッ、ターッ」ではなく、「ターターター」と繋がっている音楽のことを言います。
上述の通り、中国語は上昇二重母音系の言語なので、英語のように各単語の母音後半で減衰せず、そのまま「ターターター」と繋がる言語です。
例えば、「我要搬家」という例文で、中国人ネイティブと日本人、そして欧米人の一般的な状況を表すと下記のとおりです。
日本人の発音の特性ははまじめな国民性?もあってか、まず単語と単語を区切り、1つ1つ丁寧に発音することが多いです。
ちなみにこれは初級者に多いミスで、慣れていけば自然と消えることが多いです。
今回言及したいのは次のステップ。つまり、単語と単語が途切れがちなることは少なくなったものの、その後、上昇二重母音で処理すべき中国語の発音を、下降二重母音として処理するクセがついてしまい、結果として「雑な」発音になってしまうことです。
これが、尻切れトンボ現象の正体です。
エビデンス1
少しマニアックですが、Audacityいうソフトで、波形分析をしてみました。
『中国語解体新書(駿河台出版社)』の第一課から「说」と「明」の2つの音を抜き出してみました。1つ目はCDの音声、2つ目は私が友達としゃべるように、つまりやや雑に録音したものです。
答えは一発で出ました。
お手本のCDは shuo や ming という単語を、最後まで言い切っています。その結果、「繋がる発音」になっています。
私がしゃべった尻切れトンボ型は、shuo や ming の語尾部分を雑に発話し、弱くなってしまった結果、下降二重母音のような形になっています。
これが、本来は最後までくっきり発話しなくてならない二重母音の語尾が弱くなってしまい、中国語特有のねばっこさやレガートが失われ、結果として、ぼやけた語尾になり、キレがなくなった状態です。
まさに尻切れトンボです。
エビデンス2
せっかくなのでもう1つ例を。
YouTubeなどで活躍するポリグロットの秋山燿平さんと、同じくbilibiliで動画投稿をされるAMIKUNさん。彼ら2人の対談動画があり、それが良い例だったのでUPしてみます。
2人とも外国人としては全く問題ないレベルにある上で、あえて優劣をつけるとすると、AMIKUNさんのほうがさらにうまく聞こえます。
※彼ら2人が最も重きを置く部分は違うと思うので、あくまで「中国語の発音」だけを見た意見です。
これは、秋山さんの二重母音の後半が消失しがちで、ややボヤけている一方で、AMIKUNさんは二重母音をきっちり発音しているため、「ガチ」に聞こえるからです。
尻切れトンボにならず、母音をきっちり発音する、とは?
01:37の部分「简单的来说首先基础要做好」のピンインを見てみましょう。
(このセリフは言っていませんが)秋山燿平さんがこのセリフを言うと、上の言い方になります。つまり、二重母音の後半が消失ぎみなので(赤文字部分)、尻切れトンボになる。結果、キレがややなくなる。
一方で、AMIKUNさんは二重母音をしっかり最後まで言い切っているので(青文字部分)、「繋がった」中国語に聞こえる。
まさに上述のした二重母音の「形」がそのまま出ています。
さて、これで尻切れトンボ型がどうしてよくないのか。その原因が何かが明確になりましたね!現状把握と分析ができたら、次は改善です!
改善方法
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【さらに上級者へ】清潔な二重母音と速度の共存
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李姉妹
見本としてスピーチコンテストの例を
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